宇宙ちゃんねる (Uchu Channel)

宇宙ちゃんねる(Uchu Channel)を通して現役ロケット開発者がわたし自身が語る、ロケット開発の生の声、宇宙や星に関するいろんな情報を発信しています。 そして、この発信からいろんな人に宇宙に興味をもってもらいたい、日本の自然科学・宇宙産業をもっと活発にしたいと思っています。

なぜ ”はやぶさ、はやぶさ2の再突入カプセル”は大気圏で溶けずに地球に帰還できるのか?

このエントリーをはてなブックマークに追加

2019.7.11  2回目の着陸に成功した”はやぶさ2”

無事に小惑星 リュウグウの地表の物質を採取できたとのこと。今回はインパクターでクレーターを作り、劣化していないサンプルを持って地球に帰ってくる。帰還予定は2020.12、あと1年半後です。

 

サンプルを地球再突入時に守るのが、僕もものづくりにたずさわった再突入カプセルです。

宇宙との境目,高度100kmで”大気圏突入”し、そこからは空気が存在してくるので空力加熱により地表に戻ってくるものは超高温にさらされるという現象がおきます。

※ 実は”大気圏”という言葉の意味は、対流圏→成層圏→中間圏→熱圏と僕たちが住んでいる地表から高度400kmほどの熱圏までを示している。なので、100kmより高い位置でも大気圏なのだが、空気による加熱が始まるところを”大気圏突入”と呼んでいる。

 
隕石や小惑星も地表に衝突するまえに超高温でなくなってしまうのがほとんどなのはこの空力加熱のため。
 
2010年に地球に帰還して映画にもなった”はやぶさ”、はやぶさ本体は空力加熱で燃え尽きてしまってたが、小惑星のサンプルを採取したカプセルがオーストラリアの砂漠に帰還しました。
 
このカプセル、「なんで消滅しなかったか」というと、カプセルを形成する特殊な材料
によるものなのです。
 

f:id:Uchu-Channel:20170422011041g:plain

(JAXAさんより引用) 
 
サンプルを熱から守るカプセル表面の材料はFRP:繊維強化プラスチックと呼ばれるもの。(上図の金色の部分)繊維に樹脂を染み込ませたもので、それを熱と圧力をかけて固めて硬い材質にする。使われる繊維は洋服で使われるような繊維とはかなり違う。
 
洋服の繊維は綿やシルクなどの天然の素材を使ったもの、ナイロン、アクリルなど石油から作られる合成繊維と呼ばれるものを使っている。
 
FRPで使われる繊維の原料は炭素繊維(カーボン繊維とも呼ばれる)やシリカ繊維などがある。シリカは乾燥剤によく使われる”シリカゲル”のシリカと同じだ。
このカプセルは繊維としては炭素繊維を使っている。炭素繊維の原料となるものは先ほど洋服の原料として出てきた石油から作られる合成繊維を焼いて炭素だけにした繊維だ。
 
この材料、すでに焼かれ炭素になっているので熱にはもちろん強い、そうはいっても耐えられるのは数千℃まで。
 
先ほどの空力加熱で表面の温度は10000℃にもなるので、さすがに材料も熱で気化してくる。

 

材料は固体から気体になっていくわけなので、気体になるときはこの空力加熱熱を吸収して固体から気体になる。
これが、カプセル自体を熱から守る1つ目の効果となる。
 
(水が沸騰して、蒸気になるのも同じ原理。水は100℃で気化しますが、水が気化(蒸発)して熱を解放することでその100℃を保持しているわけですね。)
 
また、熱分解されたこの気体は”ガス”となり、これにより直接表面が高温にさらされることを防いでくれます。これが2つ目の熱から守る効果です。
 
気化した材料の残りは炭素繊維が炭化して残ります。炭素繊維が高熱でさらされたものを見たことがあるが、本当に炭に近い状態。
いわゆる”炭”なので熱には更に強い材料としてして残ります。
これが最後、3つ目の効果です。
 
こんな、カプセルに使われた材料の3つの効果ではやぶさのカプセルは消滅することなく戻ってくる。
 
この圧倒的な耐熱性を持っている材料は、ロケットやはやぶさなどで独自のものですが、炭素繊維自体は強くて軽いジェット機をはじめとした航空機の主流になっている。
車の内装にもよく使われいる。今後はもっと性能の良い素材が出てきてもっと世の中にこのFRP:繊維強化プラスチックが浸透し、ロケットやはやぶさから生まれた繊維が世の中をより快適にしてくれるようになるのだと思う。
  

f:id:Uchu-Channel:20170422010850g:plain

 (JAXAさんより引用)